奈良県の地場スーパー研究 【第四回】スーパーおくやま

奈良県のご当地スーパーを紹介するこのシリーズ。今回は奈良県中和地域のみに店舗を構えるスーパーおくやま。

2000年代、田原本から中和地区全体に店舗を展開するようになり、一躍人気スーパーに。他都道府県民はもちろん、奈良市民や生駒市民などおくやまをまだ知らない人へ魅力を届けます。

 

概要

1972年奥山務氏により磯城郡田原本町に第一号店が開業して創業。いそかわやヤオヒコ、中村屋など他のスーパーと比べだいぶ遅く、歴史が比較的浅い。

1982年に株式会社スーパーおくやまとして会社設立。

2020年、大阪のコノミヤに買収され完全子会社となる。そして昨年(2023年)遂にコノミヤに合併され、会社としては解散。屋号は継続して使用されている。

ちなみに創業者の奥山務氏はコノミヤの子会社となる2020年まで社長を務めていた。

 

店舗紹介

おくやまといえば、特に閉店もせず新町・三笠・上牧・橿原・結崎・高田の六店体制で今の今までずっと営業しているイメージが強い。というわけで、一店舗ずつ解説していく。

 

スーパーおくやま新町店

近鉄田原本駅西田原本駅があり、昔ながらの田原本の街並みが広がる<大字無し>地域の少し北、田原本町新町に1995年開業。

現役店舗として最古の店舗であり、株式会社スーパーおくやまの本部が併設されていた。

オールドな見た目だったが、子会社化を機にリニューアルされ、コノミヤロゴが入った綺麗な外観になった。

     

 

スーパーおくやま三笠店

新町店から田原本駅を挟んで反対側、田原本町三笠に2000年頃開業。

「ス ー パ ー お く や ま」の絶妙な字間と字の小ささ、「食品スーパー」ではなく「スーパー」なのが、この頃のおくやまの特徴である。(新町店も改装前はこんな感じだった)

     

 

スーパーおくやま上牧店

遂に田原本を飛び出し、北葛城郡上牧町に2002年開業。

これまでもおくやまは駐車場を完備し、車で来るお客さんに対応していたが、上牧店以降は駐車場が広大なものとなり、完全な郊外型店舗を展開するようになっていく。

米山台や葛城台、ささゆり台などニュータウンに囲まれるが、その分ディオやMEGAドン・キホーテUNY(元アピタ)などライバルも多い。

ちなみに、おくやまの店舗は「DAILY HYPER MARKET」とどこかしらに記されているのだが、上牧店は「DAILY HYPER MARCKET」と盛大に誤字っている。

 

スーパーおくやま橿原店

田原本からさらに南へ、中和幹線沿いに2007年開業。橿原といっても東の端で、桜井市との市境付近にある。

橿原店から中和幹線を少し西に進むとオークワ、ダイレックス、サンディが、桜井方面にはラ・ムー、イオン、ロピア(開業予定)があるという激戦区。

中和幹線を挟んだ向かいに配送センターがある。青字の「スーパーおくやま」は新鮮。

(左)おくやま橿原店 (右)スーパーおくやま配送センター

 

スーパーおくやま結崎店

磯城郡川西町の結崎駅近くに2010年開業。磯城郡三店舗目であり、川西町唯一のスーパーマーケット。(ちなみに川西町の北隣・安堵町と南隣・三宅町にはスーパーマーケットが存在しない。)

建物の大きさからも分かる通り、おくやま初の居抜き出店であり、元々はニチイ結崎店結崎サティ

二階は衣料品店ファミスタが入居していたが撤退し、現在はコノミヤが直営で衣料や書籍を取り扱う、総合スーパーのような形態になっている。

(左)現在は駐車場から出る道だが、かつてはちょっとした商店街のようになっていた。
(右)「サティ」が残る地図。

 

スーパーおくやま高田店

橿原店から中和幹線を西にずっと進んだ先、大和高田市広陵町との境界付近に2013年開業。現状最も新しい店舗であり、ここ以降の新規出店は無い

ココカラファインや美容院を併設しており、広めの店舗。

中和幹線沿いはここより東の橿原、西の真美ヶ丘では散々栄えているが、高田店周辺はまだまだ田んぼが広がるのどかなエリア。しかもすぐ近くにイズミヤスーパーセンター広陵店がある立地だが、何とか頑張っている印象。

     

 

一号店はどこ?

以上の文章を読んで、疑問に思ったことはないだろうか。

創業が1972年、会社設立が1982年だが、新町店の開業は1995年。新町店は一号店ではなく、創業から営業していた店舗が他にあると考えられる。

ただ、トラックに青果を積んで販売したのが始まりで、徐々に品目を増やしてスーパー業を始めたと書かれた記事*1もある。いろいろ謎のままだった中、田原本町八尾で下の看板を見つけた。

  

古そうな田原本町商工会掲示板。上の看板の「ダイエー」はダイエー八木店のことだろう。

この掲示板の下に「ファミリーショップ おくやま 小林住宅前」の文字。

他の場所でも発見。うっすら「おくやま」の文字が見える。よく見ると、「国体リハーサル大会」とか「開催 S58・9・3~6」と書かれたチラシの跡が残っている。わかくさ国体のバドミントン会場であった田原本町で、1983年に開催された全日本社会人バドミントン選手権大会のチラシだろう。すなわち、この掲示板は1983年以前からあったものであり、「ファミリーショップ おくやま」も1983年以前には存在した店舗であることが分かる。
住宅地図で探してみた結果、この掲示板があった八尾地区で「ファミリーショップ おくやま」を見つけた!

現在は花屋さんになっているが建物は当時のままと思われる。多分ここが一号店。どうやら新町店開業後もしばらく営業していたらしい。

 

おくやまのロゴ

おくやまといえば特にロゴマークもなく、外装の「おくやま」の文字もどこにでもあるような平凡なフォントである。一方、チラシや掲示類などでは丸みのあるフォントが用いられている。どちらもイメージカラーが赤であることが分かる。

(左)おくやま高田店外観 (右)高田店セルフレジ導入の掲示

コノミヤ子会社化前のチラシ。安すぎるたまごはおくやまの名物でもあった。

しかし、おくやまはロゴがなく、平凡なフォントを用いているだけとは言い切れない。

磯城郡ならどこの家にもある(?)おくやまのレジ袋。そして本当にこのレジ袋でしか見たことがないスズランのイラスト。しかもよく使われている赤ではなくオレンジ色を用いたデザイン。

「食品スーパー おくやま」のフォントも平凡ではない独特なものである。こちらはレシートにも用いられている。コノミヤの子会社になり、レシートは2023年現在でも特に変化はないが、レジ袋はコノミヤのものに変更されてしまった。

いろいろな「おくやま」

 

情報提供お待ちしています!

店舗数が少ないため、店舗の情報を調べるのは比較的容易でしたが、株式会社スーパーおくやまという企業自体の情報や、ファミリーショップおくやまなど、まだまだ分からないことばかりです。

昨年、株式会社スーパーおくやまは設立41年で解散してしまいましたが、これからも「おくやま」がコノミヤの屋号として使われ続けることを願っています。